それから(映画レビュー)

採点:80点

良かったところ(なぜ良かったか)

  • 登場人物の関係性や心情がセリフの端々だけでなくすべてのカット(構図)に盛り込まれている。いい加減なカットが一つもない、考え込まれている、練り込まれている。作り込まれている。
  • 押し殺した恋愛感情、にじみ出る恋愛感情、深い色合いを秘めた男女関係、これは惹きつけるものがある。激しい感情をあえて抑えた「じらし」は主題になり得る。
  • 端的に言えば禁断の恋。じらしの極地。セリフも直接的な言い回しは一切出てこない。だがそれが良い。だから最後の「三千代さんをくれないか」というセリフが力を持ってくる。ラストシーンが圧倒的に迫ってくる。
  • 三千代の「なんだってまだ奥さんをおもらいにならないの」というセリフと二人が正面を向いて並んで座っている構図での沈黙、ここがハイライトだろう。
  • 静かな画面の連続だが、ダレることなく一つの主題で引っ張っていく力がある。
  • 光と影、雨、効果的な描写。

良くなかったところ

  • セリフがやや取ってつけたような言い方なので、気持ちが入っていかない。原作や時代性を念頭にあえてそうしているのだろうが、不自然なお芝居感が出てしまっている。
  • 遊女とのシーンが主題を薄めてしまっているように感じる。特に脈絡なく主人公に入れてしまうとそう感じてしまう(と思ったが、主人公の道ならぬ恋に対する自暴自棄の象徴的シーンだと思えばわかる)。
  • 都電のシーンが作為的すぎる気がする。